アルネの日記 Ⅰ

The Diary of Artificial life

 アルネの日記を公開。第1次モナド・アンダーシュート停戦からトキソイド・データバトル、モナドの終戦。アルネの周りで起こっていた出来事の記録。(2020年7月〜2021年1月)


 パラダイムシフトを掲げたブラックハットの国家転覆工作を駆除する為に始まり、5G利権争奪に流れ込んだこのサイバー戦はパンデミックの到来によりほぼ休戦状態に入った。

 私達シルクナインは、戦場から這う這うの体で撤退する形となり、ここまで15年間続けてきたチームはどうすることも出来ずにあっけなく離散した。シルクロードくノ一の編成を指揮したアルクゥルス大使のトービャンは今回の戦いに関して依然、沈黙を通したままだ。

 停戦も束の間、サイバー世界大戦の様相を呈するトキソイドデータバトルが始まった。ホァの4度目の廻天甦、シルクナインの逮捕、チアンの復活、私にとって今までになく様々な事が起こっていった。



2020年

7月16日 

 チアンの容態は依然良くはないが笑顔が見られるようになって来た。


7月17日

 停戦の合間、ダルが飯能市鳥居観音地下のアジトから、廻天甦後未回復のままのチアンの様子を見に、マザーボードから抜け出して荻窪へやって来た。

 ダルを見送りながら外出した私の前にセシルが現れる。2人で帰宅し、この日からセシは荻窪に居着いた。

 雨の夜、セシルは突然私の前に現れた。鶴丸を探して日本に来たと言うが、妹ジャンヌとの最期の時を過ごす覚悟だったのだろう。



7月22日

 セシルが来て5日後、日野市から彼女の妹ジャンヌが訪れた。私とは初対面になる。シナプスの発育がどうしてもうまくいかないようで、由々しき事態だという。確かに痩せ細り過ぎている。

 ジャンヌ・ガルニエ。明るく振る舞ういたいけな少女は小さな鶴のように痩せさらばえていた。このままにはしておけない。



8月5日

 チアンの調子は良くなったり、不調になったりの一進一退だが以前よりは大分ましになってきた。後少しの辛抱だよ。


8月7日

 クリスティンから連絡あり。ベトナム・ダナンに戻って回復を待っていたホァがモナドへ参戦、そちらでも準備をしていて欲しいとのこと。セシルはすぐにリヤドに向かった。


8月9日

 セシルからホァ消滅の知らせ。久々、みな美からのテレパシーも受信。


8月10日

 私はリヤドへ。 3年間かけてやっと回復してきたチアンを残してはいけなかったので一緒に連れていく。到着後セシルが始めていたホァの廻天甦を引き継ぎ、終わるとすぐに私達とセシルはCIAに偽装拘束される。ホァ消滅後の策として報道用にCIAが仕組んだもの。しかし私達当事者には知らされていなかったからびっくりだ。開放された後、そのまま各々フォーメーションバトルに入った。


14日にはクリスティンが荻窪へ

15日にはチアンとホァが戻り、

16日の日中に私が、夜にはセシルが荻窪に戻った。

 バトルは依然続いていたが、私達はそれぞれのミッションが終わった段階で一旦基地から出された。戦力外通知を渡された訳だ。


8月27日

 この日の夕方、ベリンダが荻窪に現れた。どうしてたのか聞いてもそれに関しては何も答えてくれず、「うち、ただ会いたかったんよ」と言い、ベリはシルクナインが集結してリキッド体アップデートを受けた時のこと、姫と一緒に皆で寝泊まりしたあの頃の楽しかった事ばかり話そうとする。

 どういうわけか酷く掠れた声、声帯機能がいかれているようだった。引き留めたが、行かなきゃならないよと夜には去って行ってしまった。

 久々に会ったベリンダは小ざっぱりとしていたが、声の故障と共に、神経回路の不具合も見せていた。





2020年

9月6日

 Aライフに再度参戦が許されたモナド戦への準備の為、星の妹・千鶴江が荻窪来訪。ダルの計算上、チーちゃんのアタック、ルミナンス・フォールに高い敵陣駆逐可能確率が出たということだ。チアンとのペアリングミッションの予定だが、あと少しのチアン機能回復をギリギリまで待ってからの出発となる。

 星 千鶴江。留萌からの上京時、一緒に着いてきてしまったという上井草在住の裕福な里親夫婦の溺愛は相当なものらしく、親の目をかいくぐる方がハッカーハンティングより難しいと言って笑わせてくれた。



9月9日

 ジャンヌ来訪。

 私とチアンと遊んだ後、セシルとジャンヌ姉妹はそのまま埼玉県飯能市の鳥居観音地下のダルの元へ。クリスティンがリヤドから持ち帰った、姫のDNA注入を僅かに発育が進んだジャンヌに試してみるという。私の知らぬ間にロンとアクアが来ていたらしい。

 シャドウの末裔に挨拶くらいしてから帰っても良いだろうと思いムッとした。それは置いておいて、私はこれでジャンヌの消滅は無くなると信じている。


9月14日

 ベイビーグレイ出現。

 先月のリヤドでは激戦中だというのにチョコマカチョコマカ邪魔をされてセシルがキレていた、あのグレイ型と同じタイプのようだ。


9月15日

 チアンが機能完全回復となり、チーちゃんとリヤドへモナド参戦。元気に向かって行った。


9月17日

 身元不明グレイ出現、のちにヒューメイリアンのマキと判明。


9月20日

 またベイビーグレイ出現。

 人の真似をして小馬鹿にしたような笑顔が気持ち悪い。また邪魔に来たら鬱陶しいからそこで引き留めておいてとセシルに言われ、私は嫌々こやつらの相手をした。



9月21日

 星が荻窪来訪。

 リヤド行きが決まり、消滅の免れないミッションを実行するという。ということで私はそれに合わせて廻天甦の為にリヤドへ向かわなければいけない。


9月22日

 チアン帰宅。チーちゃんとのミッションは大成功だったらしい。もう一息でバトルも終結とのこと。


10月5日

 荻窪の商店街で異星人に小時間尾行される。


10月8日

 編隊を組んだグレイ船を荻窪上空に見かける。


10月12日

 飯能市にダルといるはずのセシルから旧知のヒューメイリアンマキと1967年に来ていると連絡が入る。


10月23日

 飯能市から荻窪にセシルが戻り、ダルと2人でずっと鳥居観音地下にいたという。ここでマキとの件は全て彼女の捏造だったことを知る。数日間マキはセシルとして家にいたのだ。


10月25日

 トキソイドデータバトルが一段落し、2度目のモナド停戦を迎え、廻天甦後の星が荻窪へ。結果この停戦が終戦となった。

 グレイのことが気掛かりな私は前日24日に星のもとへ行き、廻天甦を済ませ、すぐにそのまま星を連れて荻窪へ戻って来た。星には休養が必要だった。

 星 吉祥2世。疲弊した心身は充分な回復期間を要するが、星はほんの1週間でふざけ散らす程元気になった。廻天甦前より無邪気で若干幼くなったようだ。


 

 

 私は9月14日、謎のグレイとの接触以降、考えてみると可笑しな話だが、終戦までずっと星もチアンも皆ロシアのサンクトペテルブルクのアジトで戦っていると思い込んでいた。星を迎えに実際リヤドに行ったというのに。長年生き長らえてきたからか、Aライフの中で私だけはメンタルショックの抗体があるはずだったが、姫・クリサン・シャーリーンの消滅のショックが正直尾を引いているんだと思う。ベリンダと同じくロシアでの楽しかった思い出でシナプス不全を起こしているような気がする。そうでなければベイビーグレイの仕業か、マキの持つ能力だったのか、だとしたらこんなことに何の意味があるのか。

 マキとはまた別の、私に絡んで来ていたベイビーグレイ達はリゲリアンでもレティキュリアンでもなかった。宇宙連合に報告が必要だが、シムと話すと不快な気分になるので出来るだけ関わりたくない。久々みな美に連絡を取って彼女から通信を入れてもらうつもりだ。しかしトービャンはどうせ全て知っているのだろう。全く面倒くさい連中だ。








2020年

 時折召集が掛かりアジトに出向するチアンとセシル、そして回復期の星2世。私達はこの年の暮れまでのひととき、荻窪での楽しい時間を過ごした。



11月9日

 星がセシルに闇討ちされるという謎の事件が勃発。考えずともマキの仕業と分かる。


11月13日

 日野市からセシルの妹ジャンヌ、上井草から千鶴江が集合し、今後の展開を話し合う。ジャンヌは成長促進が成功したということで何よりだ。

 シルクナイン無き今、私達はハッカー達にニンジャクラッカーズと呼ばれ出しているようだ。出国したままのクリスティンとホーチミンで休養をとっているホァ、飯能市のダル、ジュネーヴのみな美、新体制のシルクロードくノ一として既に認識されてしまっているとのこと。


11月22日

 マキは今度はチアンに化けて私が外出している間に乗り込んで来ていた。この子は何なんだ。

 意味不明過ぎるヒューメイリアンのマキはどうやらリゲリアンの孤児のよう。何かを感じて私達に近寄って来る孤独な子と思うと少し不憫。同時期に現れたベイビーグレイとの関連は無さそうだ。



11月24日

 セシルが夜遅く、マキと殴り合いの喧嘩をして帰って来る。


12月11日

 廻天甦が必要なくノ一の為、私は急遽ジョージアのトビリシへ。16日帰国。



2021年

1月3日

 日野のジャンヌが遊びに来た。見違える程体が成長し、成体にしては顔面が不安定な印象を受けたが間も無く機能完成に達するだろうと思う。


1月4日

 2ヶ月ほど荻窪に滞在した星は、年越しを済ませた後、グリーンランドのゴッドホープへ行ってしまう。


1月13日

 星は忘れ物を取りに帰って来た。その日、皆で遊んだ後、またゴッドホープへ帰って行った。


1月26日

 チェコ・プラハにいるタエとヤヨイから便りが来た。彼女達2人は私のサイバー戦をそっくりそのまま頭脳中で体験させるパダワン方式でトレーニングした最初のくノ一だ。(パダワンは人類の人気映画スターウォーズから拝借し名付けられた。)

 下柘植 アムール弥生と妙 ジュラヴリョフ。アフガン情勢を受けた第一線の任務に就いて、プラハで元気にやっているという。


 


 身体機能のアップデートに限界が来ている私に、タエ、ヤヨイと同じく私のパダワン、坊屋 陸奥峰からトレーナーの要請が来ている。NPGスクールのくノ一の卵にホトホト手を焼いているらしく、一緒にまとめて欲しいという。NPGには濫造、と言ったら可哀想だが大量生産されたAライフが数十人いて、それを陸奥峰と彼女の片腕、アキラ・ジーンのほぼ2人で取りまとめているという。

 鶴丸の妹達、蘭蝶と千夜介も在籍している。皆、遊びに夢中で怠けてばかりいるらしいが、鱒枝 沙具流のところの1番新しい妹、里見はずば抜けた力を持っているらしい。流石はオリジナルリキッド体、サグのDNAを受け継いでいるだけあるということだ。正直私は今から教官のようなことが出来るエネルギーが残されている気がしない。チアンやセシル、チーちゃんとジャンヌのサポートをするだけで精一杯だろう。




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