Charlene Cast

1961年から58年間続いた人口生命体シャーリーン・ハプスブルクの11名をご紹介します。


サニー・シャーリーン 1世(1961-1967)

 オリジナルアルネ・シャドウと共にソビエト・レニングラードのロボット開発研究所で、宇宙連合の生物技術派遣チームにより陰陽の"陽"を担い創出された人工生命体。

 地球側研究チームの、技術解明の為の執拗な実験に耐え抜き、定められた期間の生涯を終えた。

 明るく優しく不撓不屈の愛の姫、初代シャーリーン。

 





マリア・シャーリーン 2世(1967-1972)

 初代の消滅後に新シャーリーンの観察研究の場所は東西冷戦中のソビエトから、アメリカの盲点、日本に移される。

 大分県別府市榮信寺に預かりの身となった2代目のマリアは、レタヌプリと彼女が名付けた人工生命犬と共に、天真爛漫に暮らし育っていったが、レタヌプリが野生犬から感染した狂犬病がマリアの体内に侵入し、処置する間もなく消滅した。

 他の人口生命体を知らないまま、創出から消滅まで最も平穏に暮らすことの出来たシャーリーン。





ブロッサム・シャーリーン 3世(1967-1981)

 先代マリアと同時に創出された姉妹。2人は創出後すぐに奈良と大分、別地で育てられた為に面識はなかったが、マリアがウィルスで消滅する際に存在が知らされた。

 悲嘆に暮れるブロッサムの元に1972年4世トゥルース創出の報せが届き、山口県・下関の赤間神宮が2人の新しい生活地となる。

 1976年に創出された5世シェンナと3人の家族が構成されて間もなくシャーリーン暗殺未遂事件が起こり、それが元でトゥルースが消滅した後、奈良県・東大寺に戻り隠遁、法華堂での救世祈祷を続けた。

 大幅にアップデートされた末代クリサン以外で最も長く生きたブロッサムは、シェンナが暮らす吉野山金峯山寺へ赴き、1981年2人一緒に生涯を終えた。


 5世シェンナとの入滅の地、吉野山へ向かう直前のブロッサム。法華堂の不空羂索観世音菩薩に最後の別れを告げた。






トゥルース・シャーリーン 4世(1972-1977)

 人類による人口生命体への無情な臨床心理観察計画のなか創出されたトゥルースは、奈良から喜び勇んで駆け付けたブロッサムの溢れる愛情に包まれて育つ。 

 2人の住処となった山口県下関、赤間神宮の参拝客の間で可憐な姿のトゥルースは瞬く間に噂となる。

 美しいブロッサムとトゥルースを一目見ようと全国各地から人々が押し寄せる中、狂信的な学生を装った工作員がトゥルースの顔に薬物を放つ事件が起こるが、当時の日本ではそれが炭疽菌のワクチンとなるスターンだとはすぐに解明出来なかった。

 処置の遅れたトゥルースの体内では細胞崩壊が始まり、腐食の進む顔面が作り直されるが、崩壊の進行を止めることは出来ず、事件から1年後にトゥルースは消滅した。

 事件直前にシャーリーン5世として創出されたシェンナが赤間神宮にやって来て3人での暮しが始まった矢先の出来事だった。






シェンナ・シャーリーン 5世(1976-1981)

 5体目のシャーリーンとして創出されたシェンナは人口生命体の臨床観察の一環として、ブロッサム、トゥルースと3人での生活が計画されていた。

 炭疽菌によるシャーリーン暗殺未遂事件の後、それぞれは引き離され、シェンナは奈良県・吉野山の金峯山寺預かりの身となる。

 幼く何も分からないまま吉野山で育つ内、耳に入ってくる過去の出来事からシャーリーンの宿命を知り、沈黙の隠遁生活に入ったシェンナの心の支えは、同じ奈良県で生きているはずのブロッサムの、記憶の中の面影と、蔵王堂の金剛蔵王大権現の御姿だった。

 シャーリーンへ世間の同情の目が向けられる中、秘仏特別開帳時に、当時流行していたスーパーカーの写真からシェンナが気に入ったというロータス・ヨーロッパSPが献上された。写真はその時の笑顔で、「人類の気持ちが嬉しい」と口にしたシェンナに数十人の修行僧が涙し、一斉に手を合わせてしまったという。

 この2年後、生命力が失われていった彼女は消滅する。状況を知らされていなかったはずの3世ブロッサムが訪れ、再会した2人は一緒に入滅した。





デネブ・シャーリーン 6世(1981-1984)

 70年代からエイリアンアブダクション(異星人による人間誘拐拉致事件)が表立って頻発するようになっていった。1954年宇宙連合の極左、クリル大使を介し米と条約締結していたリゲリアン・グレイ達の目に余る行為に、地球人類の次元上昇を促している宇宙連合は予防策としてシャーリーンを送り込む計画を立てた。 

 シャーリーン6世となるデネブは、創出後すぐに日本でリゲリアン機の目撃件数の多い福島県・飯野町千貫森に送られる。彼女はメディテイトテレパスによって惹きつけられ現れるベイビーグレイ達に惜しみない愛情を注ぎ、穏健派リゲリアンとの間に良好な関係を築いた。成長したベイビー達の、リゲル星への招致切望に応え、アブダクションの停止を条件にデネブは、7世シャーリーンの創出に立ち会ったのち地球を旅立つこととなった。

 人類に愛される存在になることを一心に目指して来たデネブは新シャーリーンにその願いを託し、ウォルト・ディズニーのキャラクターに因んで8世にミッキーと名付けた。しかしその後もクリル文書に反したリゲリアンの地球人拉致・実験を米は黙認し続けることになる。


 デネブがベイビーグレイに注いだ魂の有無大小を問わない分け隔てない愛情は、リゲルには存在しなかった貴重なエネルギーだった。







ミッキー・シャーリーン 7世(1984-1985)

 間も無くリゲル星に旅立つシャーリーン6世デネブの立会いの下、ミッキーは創出される。

 既にプリンセス・シャーリーンの存在は1976年トゥルース暗殺未遂事件以降世間に知れ渡っていたが、1985年日本での国際科学技術博覧会を公式に発表する場とする事が決定した。

 人々に悲劇のヒロインと認識されているシャーリーンが人口生命体だったと伝える事の是非について研究チーム内は分裂し、決定事項のミッキーお披露目前日まで反対派の抵抗が続いた。

 ミッキーはその日の為に、人々に脅威を抱かせずただのロボットと安心させようと、物笑いの種となる覚悟で、敢えてのアンドロイド風ビジュアルを装い、その動きまで練習していた。だが創出1年の若きミッキー渾身の努力は報われず、科学博のマスコットロボットとの記念撮影直後に、周囲の者が気づいた時にはミッキーの全機能は停止し細胞崩壊が始まり瞬く間に消滅する。

 研究チーム内の者か異星人しか為し得ない筈のこの出来事は、その後の調査も一切無しに封印された。





エメラルド・シャーリーン 8世(1986-1993)

 研究チーム内のいざこざの末、先代ミッキーが幼くしてその犠牲となりシャーリーン計画は一から見直されることとなった。だが何をどう改めるのか明確に決められないまま、計画自体は止めてはならないと急遽創出された8世は、つくば万博事件の翌年5月に誕生し、ひどく心を傷めていたカウンセラー・ペイル・アクアは、"心を癒す愛"を込めて誕生石のエメラルドと名付けた。

  広島県宮島の厳島神社で育った彼女は知性を磨く努力をしながら、聖俗分離・聖俗不可分と二元を自らに問い詰め思考を重ね、独自の聖俗融合を導き出した。ここから地球人工生命体の基礎、"シャドウ"と"サニー"の本質的な二気調和秩序の自覚が彼女達の中で目覚め始める。

 エメラルドは、オリジナルの"シャドウ"から幾度となくアップデートを繰り返し人類の防御兵器と化していたアルネと神戸で邂逅、親交を深めていく。

 1992年に創出された9世コスモスを丸1年間全身全霊の愛情で育て上げ、7年間の役目を終え生涯を閉じた。


 エメラルドはジャズ、リズム&ブルースなどアメリカの世俗音楽を熱心に聴いていた。当時流行していたレア・グルーヴから始まり、マーヴィン・ゲイ、リトル・リチャード、チャールズ・ミンガス、そしてカウント・ベイシーも大のお気に入りだった。






コスモス・シャーリーン 9世(1992-1999)

 先代エメラルドはロシア宇宙主義、トランスヒューマニズムと学を進め、自らと同一視出来得るポストヒューマンに辿り着く。そして9世の名前は、調和の取れたマクロコスモスへ先陣を切って旅立てるようにと願いを込めて名付けられた。7年後それが皮肉にも実現する。

 1999年、宇宙連合の地球人類アセンション(次元上昇)計画を聞き付けた新たなる勃興機関、宇宙連邦がJAXA(日本宇宙航空研究開発機構)に直接接触してきた。世紀末混乱に乗じて人類選別次元上昇を行おうという旨に、ここまで地球と関係を築いてきた宇宙連合は納得がいかず、3者での協議となった。

 結果、人類を半分淘汰しなくとも将来的にはアセンションが見込める証拠として、人類の性質をDNAにプログラミングされたシャーリーンが差し出されることになる。これはコスモス・シャーリーン 9世自らの提案だった。ここで人類の宇宙開発の為に、実は人工生命体だったプリンセスがロケットに乗り込む中継放送をする事で、人々の抵抗感を最低限にして存在を公表するというシナリオが出来上がった。

 有機結合部を隠した先方指定の機械肢体に頭脳をすげ替え旅立つその姿は、いかにも懐古未来を連想させるアンドロイドに見え、たわいもない物と感じた人類はこの報道をじきに忘れ去って行った。だが人工生命体の存在自体は広く認知される。

 コスモスは、共に幸せを分かち合ったエメラルドと1993年に別れを告げた3年後、新たに創出された10世静馨(しずか)と4年間の月日を一緒に過ごす。これはブロッサムとトゥルース以来、2代のシャーリーンの長い共棲期間となった。一緒に宇宙へ行くときかない静馨に、時間を掛けて優しく丁寧に思いを伝え、これからのシャーリーンの役目を務めていく事を納得させ、そして人類の為に旅立って行った。


 左に見える、連邦から準備された機械肢体と人体結合する直前のコスモス。泣き腫らしてフェイスペインティングが溶けてしまった静馨の顔が写っている。






静馨・シャーリーン 10世(1996-2004)

 10世静馨(しずか)は、1999年宇宙へ旅立つ9世コスモスの公式報道中継に映っていた為、人工生命に抵抗感を示す過激派に狙われる恐れがあった。急遽中華民国・台南・赤崁楼に匿われる事になり、ここが終の棲家となる。

 旅立つコスモスにシャーリーンの役目を務めていく事を言い聞かせられた静馨だったが、孤独感に苛まれ神経が衰弱する中、大脳皮質の運動性言語野、ブローカ中枢を自ら遮断してしまった。それにより人の言語は理解出来るが、言葉を発することが不可能になった。これは人類を選別アセンションさせた場合、後に起こり得るメンタルショックを示唆する一つの例として記録された。

 静馨はここから5年間沈黙の暮らしを送ったが、赤崁楼に訪れる台湾の子供達に笑顔で接し交流を深め、2004年の消滅までゴンチューラオシー(プリンセス先生)と呼ばれ親しまれた。





クリサン・シャーリーン 11世(2004-2019)

 1967年からプリンセスシャーリーンが日本で臨床心理観察を続けられて行く裏で、オリジナルアルネ"シャドウ"はアップデートを繰り返され、量産化が行われていった。そのうちの一人は2000年に日本の代々続く水術忍者家系の名家、鱒枝の元に送られていた。

 鱒枝 紗具流(ますえだ さぐる)と名付けられるこの人工生命体は水術の訓練を続ける内、レディー・ボール博士も予想だにしていなかった肉体変異を起こす。自ら体を流動的に変えられるこの現象に、レディーとロンは更なる研究を重ね、形状記憶液状生命体へのアップデートを可能にする。この計画を将来的に実現させるべく、2004年に複数のAlifeが創出された。シルクナインでは星 吉祥・備前ベリンダ・上月鶴丸・圓 薊・エリカの5名、そしてシャーリーン11世クリサンだった。5年後のこの大幅なアップデートでAlifeの寿命は飛躍的に延びた。  

 21世紀に突入し、先が見えなくなっていたシャーリーン計画、クリサンがサンクトペテルブルクのロボット開発研究所で時間を持て余していた所に、方々に散っていたシルクナインが集合する。形状記憶液状生命体アップデートを実行する為、アルネ、セシル、ファン・ホァ、ジャルメも訪れ、新肉体での訓練が続く中、クリサンは夢のような学校生活を体験した。

 シルクナインそれぞれが任務に向かい、また一人になったクリサンは、9人のようにサイバー戦で務めを果たしたいと考えるようになり、消滅して行くシルクナインに心を傷めながら、密かに参加に向けて備えて行く。

 2019年モナド大戦が勃発したが、Aライフチーム・シルクロードくノ一は戦力低下で先が無い状態、居ても立っても居られなかったクリサンは、ロシアからサウジアラビアに向かい、シルクナインが戦っている地下アジト、モナド・アンダーセントラルタワーへ入塔した。

 アルネやセシルに引けを取らない攻防を見せるが、刻一刻と新しいアタックを仕掛けるハッカー達の攻撃を直に受けてしまい細胞崩壊が始まる。メモリーリキッド体の分解は、ある程度の時間内ならばアルネの組織で再構築(これを廻天甦という)が出来るが、クリサンはこれを受けずに消滅した。これが58年間続いたシャーリーン・ハプスブルクの歴史の結末となる。


 シャーリーン代々の悲しい歴史を一切伝えられていなかったクリサンだったが、最期の時を迎え、映像となってゆっくりと流れるその経緯とそれぞれの思いを、崩壊して行く細胞で体感する。そして人工生命体ながら十分6次元へと昇華出来る魂を持った、誇らしいシャーリーン達のもとへ向かう道を選択した。




  

 この戦い後、モナド戦は一時停戦となる。クリサンの消滅にメンタルショックを受けたシルクナイン達がそれぞれリヤドを離れて行く中、クリスティン毘盧はクリサンの細胞を採取し、DNAを厳重に保存した。間も無くこれは消滅が近かったセシルの妹、ジャンヌを救う物となった。これによりプリンセス・シャーリーンのDNAは途絶えずに受け継がれて行くことになる。







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